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「出産女性が母」法案成立へ 出自を知る権利の保障、先送り

 

第三者から精子や卵子の提供を受けて、生殖補助医療によって子どもを授かった場合の親子関係を定める民法特例法案が2日、衆院法務委員会で可決された。与野党5会派が賛成、4日の本会議で成立する見通しとなった。親子関係が不安定にならないよう法律で定めるのが狙い。ただ、第三者からの精子や卵子で生まれた子の「出自を知る権利」などの課題は先送りされた。

 法案は、第三者からの卵子提供による不妊治療で子どもが生まれた場合、出産した女性を母親とする。夫以外の男性の精子による不妊治療で妻が妊娠した場合、精子提供に同意した夫を父親とする。

 夫婦関係の悪化によって父子関係が争われるような事例もあることから、法案提出者の古川俊治氏(自民)は「親子関係を定めておくことが子の福祉の観点からも重要だ」と説明した。

 一方、生まれた子の出自を知る権利は検討課題として付則に盛り込まれた。衆院法務委には他人から提供された精子で生まれた当事者が出席。23歳の時に告知を受け、苦しみ悩んだ体験を語り、知る権利を保障すべきだと訴えた。

 また、同法案の基本理念に生殖補助医療により生まれる子については、心身ともに健やかに生まれるよう配慮するとあることから、障害者団体から「優生思想につながりかねない」と条文の削除を求める要望書が出ている。法案提出者の石橋通宏氏(立憲)は「障害のある子の出生を否定的にとらえるとか、優生思想につながるものではまったくない」と語った。(三輪さち子)

 ■課題、残したまま

 旧厚生省の専門委員会は2000年、精子や卵子の提供を認め、条件として親子関係を法律に明記することを報告書にまとめた。03年には厚生労働省の部会が、子どもが遺伝上の親を知る「出自を知る権利」も認める報告書を出した。

 だが、国会などでの議論は深まらずに時間だけが過ぎた。今回は結局、卵子提供などの親子関係は明文化する一方、出自を知る権利については手をつけなかった。海外での代理出産のあっせんなど、商業化が進む生殖補助医療の規制措置などにも踏み込んでいない。

 生殖補助医療に詳しい埼玉医科大の石原理教授(産婦人科)は「親子関係の整備は今後の議論の土台になる。出自を知る権利についても議論する必要があるが、まずは長らく止まっていた一歩目が重要」と話す。

 第三者の精子を子宮に入れる人工授精を国内で最も多く手がける慶応大学病院は現在、新規の受け入れを中止している。生まれた子どもが精子提供者の情報開示を求めた場合に応じる可能性があることを同意書に明記したところ、提供者が集まらなくなったためだ。

 同大の田中守教授(産科)は「出自を知る権利は重要だが、情報提供でドナーが減少するのは間違いない」と話す。合意できるところだけを優先させ、スピード重視で成立させた形に批判もある。明治学院大学の柘植あづみ教授(医療人類学)は「検討事項を多く残したまま、2年で検討すると言い訳して、精子提供や卵子提供をなし崩しで認めた感がある」と指摘する。(市野塊、阿部彰芳)

 

出典:朝日新聞デジタル

https://digital.asahi.com/articles/DA3S14717609.html?_requesturl=articles/DA3S14717609.htmlhttps://www.asahi.com/articles/DA3S14661055.html