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代理出産、国内でも限定容認案 自民で浮上、法改正案に反映の可能性

代理出産が国内で容認される可能性が出てきた。2020年末に第三者の精子や卵子で生まれた子の親子関係を定める「生殖補助医療法」が成立した際、規制のあり方については「2年をめどに検討」とされていたが、自民党内で容認論が出ている。ただ、倫理面などで課題は多い。(足立菜摘、市野塊)

 

「厳格な要件の下で代理出産を認めるべきだという意見があった」。29日の自民党の会合で、古川俊治座長は記者団にそう話した。

 

国内で臨床研究の準備が進む「子宮移植」が実用化されるまでの時限的な措置とする。対象となる人の要件は厚労省の審議会で議論してもらう考えだが、先天的に子宮がない人などが想定されるとみられる。

 

「2年をめどに検討」の期限は、今秋の臨時国会となる。改正法案を準備する超党派の議員連盟が3月に骨子案をまとめているが、そこに盛り込まれる可能性が出てきた。今後は自民党内や超党派の議連で議論を続けるという。

 

ただ、代理出産は出産のリスクを第三者に負わせることになる。民法では代理出産で生まれてくる子どもを想定していないため、法律上の親子関係が複雑になる。このため、これまでにも何度も議論されたが動かなかった経緯がある。

 

国内では00年に厚生省(当時)の専門委員会が、03年にも厚生労働省の部会が、代理出産を禁止とする考え方をまとめた。日本産科婦人科学会も03年の見解で禁止した。

 

一方、海外に渡って代理出産する例や、国内でも学会の見解に反して実施するクリニックもある。代理出産によって生まれてきた子どもは実際に存在するが、親子関係をどう整理し、子どもの権利を守るかが課題となっている。

 

最高裁は07年、米国で代理出産を依頼した夫妻に対し、自分の卵子を提供した場合でも、現在の民法では母子関係の成立が認められないとする判決を出した。血縁関係の有無にかかわらず、法律上の母親は代理母となる。

 

日本学術会議の検討委員会は08年、「生殖補助医療法のような新たな立法が必要で、当面は原則禁止とすることが望ましい」と報告書をまとめた。法的拘束力のない学会の見解ではなく、法制化して代理出産による親子関係を整理したうえで、規制を進めるべきだとの声は根強くある。

 

経済的な格差、背景にある場合も 代理出産を認めた場合、どのような問題が起きるのか。

 

岡山大大学院の中塚幹也教授(生殖医学)は「これまでの議論をふまえると、国内では商業的な代理出産はそぐわない」としたうえで、「カップルの母親が代理母となった場合、超高齢での出産になるリスクがある」と話す。

 

高齢妊娠は、妊娠を続けられなくなるような合併症の可能性が高まる。姉妹が代理母になれば医学的なリスクは下がるが、引き渡しや相続をめぐるトラブルの可能性や、社会的な課題は残る。

 

明治学院大の柘植あづみ教授(医療人類学)は「営利目的の実施は禁止できても、どうしても子どもが欲しい人と、納得して引き受ける人がいれば家族間などでは禁止することはできないと思う」とするが、「女性のからだを、子どもを産むための手段として使うことにならないか」と懸念を示す。

 

海外では、代理出産で障害がある子どもが生まれ、依頼者が引き取りを拒否した事例も報告されている。同様の事例が起きたときに、子どもが育つための環境や権利を保障するための制度も議論する必要がある、という。

 

米国では商業的な代理出産が認められている州もあり、移民や、白人以外の人たちが代理母になるケースが多いと報告されている。経済的な格差が背景にあるとみられる。

 

所得や社会的地位が低い女性に対し、あっせん業者が「人の役に立てる仕事で、感謝される」と強調して代理母を募ることで、日常で感謝される経験を得にくい人たちの気持ちを利用する「感情の搾取」が起きていることも懸念されるという。