第三者が提供した精子や卵子を用いた生殖医療で生まれた子どもが遺伝上の親を知る権利の保障を求め、日弁連が30日、都内で集会を開いた。超党派の議員連盟が子どもが出自を知るには提供者の同意を必要とする新法骨子案をまとめたことを受け、当事者らは「出自を知る権利は子どもの権利で、提供者の意思によって左右されるものではない。情報開示に了承した人のみが提供者になるべきだ」と訴えた。
当事者の石塚幸子(いしづか・さちこ)さんは23歳の時、提供精子で生まれたことを母親から初めて知らされた。「親のうその上にこれまでの人生があったように感じてしまった。精子という物ではなく実在する人がいたから自分がいることを実感したいので提供者を知りたい」と話した。
また不妊治療の当事者で提供精子を利用する親の会の事務局を務める清水清美(しみず・きよみ)・城西国際大教授は「会の参加者の7割は子どもへの告知を考えているが、残り3割は周囲や社会の心ない言葉から子どもや家族を守るために告知したくないと考えている」と紹介。「社会の支えなど親が子どもに告知できる環境整備が必要だ」と強調した。
超党派議連は3月、提供者らの情報を独立行政法人で100年間保存し、成人になった子どもから情報を求められれば提供者が同意した場合に限り子どもに伝えるとする新法骨子案を作成。自民党内でその他の項目の調整が続き、今国会への法案提出は見送られた。